組織人事戦略研究会
戦略人事について キャリア開発について 組織を強くする為に 組織人事戦略研究会について コラムコーナー データダウンロード 問い合わせ
過去の記事
 

【当日のレポートはこちら】

組織人事戦略研究会 第36回研究会 特別開催(募集人数が限定的のため、抽選となります)
 
テーマ 「数々のクルマを世に出した名物LPLが語るリーダー論、チーム論」
内容
 2015年11月の第36回 事例研究会は、
元本田技術研究所 LPL、現本田技術研究所 社友の
蓮子 末大 様をお招きし、「数々のクルマを世に出した名物LPLが語るリーダー論、チーム論」と題して、参加者の皆さまとともにディスカッションを進めてまいります。

■講演のポイント

ホンダの車作りの根幹になるのがLPL(ラージプロジェクトリーダー)です。
LPLは、一台に一人が担当となり、最終的に性能、機能やデザインというモノ創り側の全責任を負う立場です。時には千人規模のメンバーを束ねる人。従って、一人が2〜3台を担当するのが一般的ですが、蓮子さんは、10台以上に関与した名物LPLです。
その体験から、ご自身が実践された「リーダーとは」「チームとは」を語っていただきたいと思います。

講師
プロフィール
■講演者プロフィール

1972年 株式会社 本田技術研究所入社。2014年10月一年間の延長を経て退職
入社以来、初代プレリュード、2・3代目シビックのサスペンション設計を担当。完成研究開発部門にて、初代CR-Vなどの先行研究LPLを経て商品企画を担当。
さらに、欧州3ドアシビックとシビックTYPEーRのLPLを担当。
3代目ステップワゴンのLPLを務めた。最後に、欧州5ドアシビックと今年の東京モーターショーで発表したシビックTYPE-RのLPLを務めて退職。


   
■日時 2015/11/25(水)18:45〜22:00(開場:18:30)
  • 18:45-21:00 事例研究会
  • 21:00-22:00 懇親会(ゲストも参加されます)
   
■会場 ヒューマンロジック研究所 セミナールーム
(東京都港区白金1-27-6 白金高輪ステーションビル4F)
地図: 会場までの地図はこちらをご確認下さい.
   
■定員 25名 【終了しました】
   

 
第36回研究会 ご報告


ホンダの車創りは、たった一人のリーダー=LPL(ラージプロジェクトリーダー)に意思決定に委ねられています。最大規模になると1000名近い技術者を束ねてモノ創りの意思決定をしつつも、一方では販売組織や製造部門を巻き込み、最終的に経営層の支持を勝ち取る必要があります。つまり、「社長よりも負荷が大きい」と言われるような立場なのです。
そのため、LPLとして指揮できるのは生涯複数台が限界のようです。しかし、その中で十数台を指揮した蓮子さんは、名物LPL≠ニ言われています。
今回、元本田技術研究所 LPL、現本田技術研究所 社友の蓮子 末大 様をお招きし、「数々のクルマを世に出した名物LPLが語るリーダー論、チーム論」と題して、ご講話いただき、その後参加者でディスカッションを行いました。




LPLはライン組織には所属せず、商品として一台の車を完成させるまでを指揮する役割です。そのため、部下は全て各機能の部署から割り当てられた人材であり、組織的な後ろ盾はありません。各組織の思惑を離れて活動できるというメリットもありますが、立場的には一人で組織相手に立ち回る必要があります。
また、販売や製造も味方につけ、最終的に経営からの開発予算 (ホンダは、「本田技術研究所」は研究と開発のみ。「本田技研工業」が販売と製造を担当する)、を確保する必要が出てくるため、「売りやすい車」に妥協するのか、「作りたい車」で突き通すのか、様々な意思決定が求められます。
つまり横断的なプロジェクトチームの責任者というだけでなく、『商品としての車を出す最終責任者』という重い責任が付与されたのがLPLということになります。

LPLは、ほぼ技術研究開発者の中から選抜されます。概ね、研究開発(機能)を10年ぐらい経験して、その技術を深める方向へ向かう人と、車作りに向かう人が分かれてきます。その中で、車作りに向かう人の中からLPLは抜擢されますが、その抜擢は研究所のトップが指名するという形になります。
「良い車を創る」ということに妥協はありません。そのため、経営陣や各部門の利害を超えた対立も辞さないため、嫌われることもあり、出世を約束されるような仕事ではないのです。『車を作った』という感動を味わえる仕事ではあります。
<リーダーであることの意味>
LPL自体は組織を持たないし、原資もありません。経営資源で言うところの「人」→『全員、志があるわけでないメンバー』、「モノ」→『欲しい技術がそろっているわけではない状況』、「金」→『限られている』という状況なのです。
やる気を引き出すために「強い商品メッセージを発信してチームのモチベーションを高める」千人規模になると、様々なメンバーが集まっています。情報も飛び交います。その中で取捨選択するしかない。話を聞いて信じるしかないのです。
しかも、「各部門の利益代表を集めて、組織的な後ろ盾のないリーダーがとりまとめを行うという構造」なので、LPLがよほど強いコンセプトを主張しない限り、利害調整の結果、当たり障りのない意志決定になってしまう可能性があるのです。
従って、「お客さんを味方に付けた議論」をしたり、利害調整が必要になる前に「火種は大火事になるから、早めに消しにかかる(経営会議で意思統一させる)」ために、積極的な動きが必要なります。例えば、広報と打ち合せをする際、社長に先に開発目標を発信させておいて「社長が言った以上はやんなきゃ駄目だよね」なんていうことも仕掛けました。


<責任は半端じゃない>
例えば、既存の工場にあるラインで流せない車を作りたければ、新しい工場を建てるのか?といったことまで「意志決定の範囲に入る」ことになります。それは当然既存の経営戦略との兼ね合いが出てきます。それでも経営を説得するのであれば、LPL自身がよほど揺るぎない「車を作るための思い」を持っておく必要があるのです。
開発中止をする場合でも影響力は絶大です。「開発は止めましょう」と自らトップに進言する場合もあります。すでに人が関与し、コストがかかっています。「今止めると数十億円の損失で済むが、売り出して売れないと数百音円の損失になる」という決断が求められるのです。私自身の経験の中で何度か開発中止を進言しました。トップから「売れるんじゃないの」と『続行』を促されたこともありますが、そこは自らの判断を信じるしかなかったのです。その他、外的な要因での中止もあり、自分が関与した中から世に出た車は3割ぐらいではないか?と思います。

<強い意思が求められる>
LPLは創りたい車のコンセプト≠実現するためにあらゆる手を尽くすことになります。「強い車を作ろうとすると組織とぶつかる」ことになり『組織に迎合すると、面白くない車になってしまう』こともある。そのせめぎ合いの中で、LPLが舵を切るのですから、本人に強い意思がないと、強い車が生まれないのです。
また、メンバーは自分で選べないため、とにかく常に「強い商品メッセージを発信してチームのモチベーションを高める」ことが必要になります。
リソースが限られている中で、全ての課題を期限内に解決して、商品としてパッケージするということが求められているのです。追い込まれることも多々ありました。
「どんな難題も考えれば解決できる」という意識で事に当たり、「酒飲みながら紙と鉛筆で一晩考えると、朝方何となく解決策が浮かんでくる」という体験もたくさんしました。

<抜擢と育成はどうするのか?>
LPLを決めるのはトップです。しかし、明確な(明文化された)基準はありません。そのため、当然、目利きのよりLPLのレベルが変わったりもすることもあります。ただ、選ばれた人に関して、「なぜ、あいつなんだ」と違和感があることはないのです。つまり、明確な基準はなくとも、その基準に満たない人が選ばれないのです。
育成は、基本的には自分自身で振り返りつつ、自己研鑽するしかありません。私は後進のLPLたちにフィードバックをすることで、自身の仕事の振り返りの場を用意することはありました。ただ「何をしたからLPLとして成功できる」という体系的なものはありません。
また、「LPLの補佐としてプロジェクトに入って経験を積む」というのは『意味をなさない』のです。「決定権があるということの意味は、決定権を持たないとわからない」のです。なので、とりあえずやらせてみて、自分で試行錯誤して、結果を出せる人しか生き残れないのです。



■まとめ
LPLを通じて見えてきた「リーダー像」は、『有事のリーダー像』です。以下、特筆すべき点を列挙しました。
・メンバーをまとめるだけではなく、結果として「売れること」にも責任を負う立場である
・経営層や既存組織を巻き込んだり、ぶつかったり。利害調整しながらも突き抜けるところのバランス感覚が求められる
・そのために、強いコンセプトを生み出せる人=「本人の思い」も強くなければならない
・全員を把握できない以上、任せた人を信じるしかない=目利きが求められる
様々な軋轢もあり「出世を約束されるポジションではない」というところ
また、明文化された基準ではないが、誰が見ても納得できる♀準
育てるというよりも、抜擢して、やらせることしかないこと

自動車業界が世界レベルで再編を繰り返している中、ホンダという企業は一貫して独立性を保っています。技術的にも独自性を貫く姿勢があります。
その企業風土があるからこそ、『有事のリーダー』を排出する仕組みが残っているのではないでしょうか。もしくはその逆で、この仕組みが風土を生み出しているのかもしれません。
また、頭に残っているのが「決定権があるという意味は、持たないとわからない」ということです。つまり、「有事のリーダー」は育てられない。やらせてみるしかないのです。



■質問と議論について
お話しいただいた内容をふまえて参加者で議論を行いました。質疑のやりとりをいくつかをピックアップしました。

<コンセプトを作るためにかかる時間は?>
ちゃんと報告できるまで8ヶ月ぐらい。議論を何回も繰り返すしかない。
コンセプトを考えながら、要素技術が社内にあるかどうかなどを見ながら、並列に動くことになる。求める要素技術がないと、ホンダ以外から買ってくるというようなことになる。これも当然議論になる。

<フルモデルチェンジとマイナーチェンジではコンセプトのあり方も違うのではないか?>
歴史をどれだけ崩せるのかというのはある。フルモデルチェンジなら過去の否定から(全否定する)、マイナーチェンジであればコンセプトは変わらない。
ただ、否定からはいるが、突き詰めていくと肯定するモノが出てくる。例えば『シビックとして守らなければ行けないモノ』といったようなこと。→お客さんは何を持ってシビックと思っているのか。徹底的にヒアリングをする。
自分が間違った信念を持っている可能性があるので、お客さんから離れないようにするために。

<コンセプトがいいか悪いかという判断はどのようにするのか?>
売れるかどうかという予測はしっかり行う。企画段階で厳密な査定を行うようにしている。
そういった要素も含めてやるかやらないかを決めている。

<優秀人材が固定メンバー化されないのか(LPLが人材囲い込みをしないのか)?>
人材の囲い込みをできるわけでない。「チームは車を育てる」「部門が人を育てる」という役割分担がある。
与えられた人材を使ってやらせるしかない。考えさせるしかない。
相手を知ることから始めて、その相手に必要なことを考えさせる。

<全員がLPLを目指すことになるのか?>
「オレは部品でいいや」という人もいる。研究を極める方向に満足する場合もある。
尖った人材を引き上げる風土は必要。LPLになると、本人がギブアップしない限りはやらせる。






メルマガ登録お問い合わせサイトマップ著作権について