組織人事戦略研究会
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組織人事戦略研究会 第32回研究会開催
 
テーマ 「博報堂における<自分ごと>の意識を重視する新入社員OJTの取り組み」
内容
 2013年 1月の事例研究会は、
株式会社博報堂 HAKUHODO UNIV. 人材開発戦略室 人材開発一部 マネジメントプラニングディレクターの
白井 剛司 様をゲストにお迎えいたします。


■講演のポイント

博報堂は、企業内大学、HAKUHODO UNIV.(通称:博報堂大学)を、2005年4月に設立しました。
その活動の中で、今の時代にあった新入社員OJTを再定義して自社オリジナルの取り組みを推進しています。 新入社員OJTの取り組みについて5年間の過程と現在の取り組みの全体像を白井様よりお話いただきます。
講師
プロフィール
■講演者プロフィール

 1993年 大学卒業後、株式会社博報堂に入社。
     株式会社博報堂にて主に営業職。
     広告・コミュニケーション〜マーケティング業務のプロデュース活動を行う。
 2005年 設立直後の博報堂大学(人材開発戦略室)に異動。
     2007年度より新入社員OJT業務を担当。
     主に育成者(=OJTトレーナー)に対して育成・指導の技術や考え方を提供し育成の支援活動を推進してきた。
     社外講師や受講者であるトレーナー、また実際の育てられる側である
     新入社員との対話を経て、2011年度に現行の活動を開始し、今に至る。


■日時 2013/ 1/23(水)18:45〜22:00(開場:18:30)
  • 18:45-21:00 事例研究会
  • 21:00-22:00 懇親会(ゲストも参加されます)
   
■会場 ヒューマンロジック研究所 セミナールーム
(東京都港区白金1-27-6 白金高輪ステーションビル4F)
   
■定員 25名 【終了しました】
   

 
第32回研究会 ご報告


今回の組織人事戦略研究会は、ゲストスピーカーとして株式会社博報堂 HAKUHODO UNIV.人材開発戦略室 人材開発一部 マネジメントプラニングディレクターの白井剛司様にお越しいただき、「博報堂における<自分ごと>の意識を重視する新入社員OJTの取り組み」というテーマにて、お話いただきました。

白井様は新人育成担当者(以下トレーナー)および、新入社員育成体制の構築に向けたサポートをされています。新入社員が仕事を「自分ごと」として捉え主体性を高めるに、現場のトレーナーをどのようにして支援されているのか?白井様のスピーチ概要をご紹介いたします。



■新入社員OJTのコンセプト

 博報堂で働く人の基本姿勢として、「考え抜く姿勢」を大切にしています。他人のアイデアも受け入れつつ、常に主体に活動していくことが求められます。したがって新入社員には、仕事を任せることによって主体性を高めてもらうこと、トレーナーは<自分ごと>の意識を伝えることをOJTのコンセプトにしています。

■OJTが難しくなってきている環境変化

 自社だけではなく、世の中全般的にも考えられる共通課題として、以下のような内容をトレーナーにまず伝えています。現場でのOJTは難しくなっているのです。
 ・PC普及、Mail、携帯電話によるコミュニケーションの変化
 ・アウトソーシング、グループ内連携による定型のルーティンワークの減少
 ・新事業領域への対応、業務の複雑化、高速化

 かつて新入社員は多くの人のアドバイスを受けながら、ルーティン/ベーシックな仕事に時間をかけて成長してきましたが、昨今社員に求められる業務は非常に高度化しています。また場合によっては、上司が経験していない新領域への業務が発生することもあります。このような状況の中で、新入社員は早期に成長することを求められる一方で、現場では指導の難しさも生じています。

■育成者を育成しなければならない

 従来はトレーナーが新人に業務内容を日誌形式で伝え、上から落とし込むという状況であり、研修事務局側はトレーナー向けガイダンスを中心にサポートするという体制でした。しかし、OJTが難しくなっていくような環境変化、社内としても05年過ぎからインターネット領域の業務が多忙を極め、担当トレーナーも徐々に若年齢化していくこともありました。まずは、「育成者を育成しなければならない」とし、トレーナー体制も変更しました。
 現在は、現場で入社8年目以上のOJTトレーナーを1名必ず選任してもらい、JOBトレーナーという入社数年目の先輩社員を任意で選任してもらう体制という2名体制を取っています。日誌形式のレポートも新人から発信してもらい、トレーナーがフォローするという流れに変更しました。

■トレーナーと新入社員には意識のギャップはある

 トレーナーは、「背中を見て育て。やりながら覚えよう。」「失敗を怖がるな。経験を積め。」という意識を少なからず持っています。ある種、愛情を持った言葉・姿勢ではあるのですが、一方で新入社員にとっては失敗しても良いといっても、“失敗すれば、どれほどの人に迷惑をかけるのか”という心配もします。

 トレーナーが感じている以上に、トレーナー自身が新人であった頃よりも、昨今は高速、難易度の高い業務もあります。我々が思っている以上に新入社員は状況も察しますので、業務に取り組む前に説明を求める傾向もあるように思います。トレーナーの育成意識と新入社員の感覚には大きなギャップが生じているのです。ギャップを埋めることがOJTには重要です。「自分ごと化」できればギャップは埋まる。トレーナーも「自分ごと」として失敗すれば新入社員をより支援するという意識が高まり、新人も「自分ごと」としてチャレンジすれば、トレーナーも認めてくれるという意識が芽生えてきます。

 新入社員OJTの考え方は、「自分ごと」の意識を新入社員に身につけてもらうことです。この意識が身につくと、「オーナーシップを持った上でのアウトプット」、「未経験な業務でもやり遂げるという意識」、「自分なりの意味をもって取り組むという姿勢」に変わります。

 「自分ごと」は自分にとっての信頼感にもなり、失敗を怖れず仕事に取り組むようになります。
新入社員が「自分ごと」としての意識を持つためには、仲間、チーム、組織に対する安心感や信頼感がなければ生まれてこないということをトレーナーにも伝えるようにしています。

 トレーナーを選任するだけではなく、トレーナー、新人双方の意識のギャップを埋めるような取り組みを実施していくことによって、お互いに信頼感が生まれ「自分ごと化」の意識が醸成されます。結果、新人にとって仕事は経験となり、失敗は学びとなり、指導者・評価者は支援者になっていく、と考えています。


■ギャップを埋める具体的な取り組み、<自分ごと化>させるとは?
 「任せて・見る」、「任せ・きる」の2段階による仕事の任せ方


 <自分ごと>として、主体的な意識を持ってもらうためには、「仕事を任せる」ことです。ただし、「任せ方」を考え、1年のOJT期間を以下のように進めています。

●初めに一年後のゴール設定を行う
 新入社員自ら一年後のゴール設定をシートに記入してもらいます。常に理想に対して現実とのギャップを可視化させて、トレーナーとコミュニケーションを図っていくためです。

●「任せて・見る」という前半(配属後6月〜10月)段階
 前半は指導が中心です。事前に仕事の全体像・意味を教えて、仕事を経験させフィードバックするという任せ方。任せてみるものの、トレーナーは常に併走するという立場です。設定したゴールまで何が必要か、意味づけを振り返り、介入しながら軌道修正をしていきます。仕事の全体像を掴んでもらうためにも、仕事の始点〜終点までを一気通過させるようトレーナーには心がけてもらいます。

 しかし、「任せる」とはいえ併走してもらうことを考えると、むしろトレーナーには負荷のかかることでもあります。期間中全体の8割程度はルーティンとなる業務を選定してもらい、2割程度の仕事を「任せる」ように伝えています。2割においては、極力自分が“バッターボックスに立っているという意識”<自分ごと>という意識を持たせるようにしてもらいます。

●「任せ・きる」という後半段階(11月〜3月)
 後半は、オーナーシップは自分にあるものとして新入社員に仕事を任せてもらいます。
プロセスから考えさせて、修羅場体験・一皮むけてもらう経験を用意してもらい、後方で支援するようになります。前半では介入する立場であるトレーナーも後半ではプロセス設計にも介入していきません。ただし、ここでも設定したゴールが理想に対して外れていないか、シュリンクしていないか、必ず可視化して新人とコミュニケーションするようにはしてもらいます。

 「任せる」目安としては、後期で1回のピークの仕事。本人に「乗り越えた」と自覚してもらうこと、周囲の先輩も「やり切った」と認められる一番のピークを作ってもらいます。そして、重要なのは「成功体験」として新人に仕事を終了してもらうことです。

■現場での取り組みを事務局はどのように推進していくか?
 〜地道・愚直なる改善活動の積み重ね〜


 事務局としてはトレーナーを研修形式でフォローします。OJTスタート時点、後半段階に入る時点は必ず参加してもらう場を設け、また期間内に希望者には個別指導の場も設けています。いずれの場も研修というよりもトレーナー同士の対話を重視するワークショップ形式です。

 トレーナーの会話や発表内容を全て議事録にし、現場が感じている課題を抽出していきます。また期間終了後トレーナーに了承をもらえれば、新人にもインタビューにいきます。トレーナーには「インタビュー内容をフィードバックしないが、会社のために協力して欲しい」と伝えています。新人から「きれいごと」を言われても意味がないためです。常に「生の声」を拾い上げ、新しいものを発見・概念化し、翌年の資料に活かすよう、地道に愚直なる改善活動を積み重ねています。



■研究会としてのまとめ
 新入社員の育成はどの企業においても大きな課題です。OJT制度があったとしても現場で形骸化しているケースもあります。現場にOJTは任さざるを得ない現実はあります。しかし、「任せ方」を設計し、適宜フォローする立場を取りながら、常に「現場課題と生の声」を社内に共有していくという在り方は、示唆に富む具体例であったと考えます。
 新入社員の現場育成は、現場の先輩たちに委ねられるため“靴の上から足をかく作業”です。人事部内がどこまで愚直に取り組むかが問われるのです。





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